「橋を渡ったら泣け」シアターコクーン

田英夫氏率いる劇団MONOの作品を、生瀬勝久さんが演出。この取り合わせといいかなりの豪華キャストといい、これは見逃せません。




大震災で崩壊した日本。ライフラインが断たれ、地割れで孤島状態になった長野県のある都市(かな?)には、たまたまカンヅメ倉庫があったため、7人の男女が生き残って生活している。そこに流れ着いた遊覧船の操縦士・佐田山(大倉孝二)。明るく前向きに過ごす7人に歓迎され、その一員として生活を始めるが、そこにはやはり露骨なパワーゲームが生まれていく……。


リリパットアーミーとか遊気舍とかM.O.Pとか、関西の劇団って、物語の設定や展開がダークでもあまり怖くない印象があります。割とけれん重視でざっくりしてるから。MONOの土田さんはその中でも機微を丁寧に描く方で、今回も、頭でっかちで頼りにならないダンナ&感覚でたくましく生きてる妻・赤萩夫婦(小松和重戸田恵子)とか、あまり頭がよくないため、逆にどんな極限状態でもニュートラルにいられる井上(八嶋智人)とか、印象的なキャラクターが何人も。


ただラスト……あの大雑把さはちょっと(笑)。そうきましたか。MONOの役者さんはフツウに見える巧者揃いで、その地味リアルな人たちがこの未来物語を演じるとかなり奥行きが出るのだろうけど、このスターキャストだと、やっぱり「つくりごと」めいた華やかさが前に出ますね。それはそれで「おもしろーい」という間口の広さを手に入れるので、少しも悪いことではない。演劇初めて観に行きます、という方にはピッタリだと思います。演出もひねりなく素直でしたし。私も楽しみました。「パワーゲーム物」大好きなので、期待値よりはアレ?でしたけど。初演観たかったなぁと思ったけど。


もちろん、これだけの芸達者が揃っているのでお芝居も堪能。特に大倉さんがこんなに地力の強い役者さんだとは、と改めて感動した。おどおどした最初、笑いをとる中盤、二枚目として舞台の芯になる終盤、どれもうまいなー。佐田山の「優しさ」が前に出ている感じがしたのは、大倉さんの持ち味なのかもしれないですね。


それとは別に、イワマユちゃんロックオン☆……初舞台にしては頑張っていたと思いました。どうしても歩き方や立ち方はまだ決まらないのですけど(その点、戸田さんが神様に見える)*1

*1:最近舞台で観た若手女優さんでは、貫地谷ちゃんの冷静さが忘れられない。NHKも向いてるけど、そこにはまりすぎないで大物さんになってくださーい!