ペンギンプルペイルパイルズ「ワンマン・ショー」@シアタートラム(ネタバレあり)

第48回岸田戯曲賞受賞作の再演。倉持裕さんの作品のファンだった割に、岸田賞を獲られていたことを知りませんでした。すみませーん。だからなのか、評判がいいのか、トラムは立ち見まで出る満員。フレームを歪めて重ねたようなセットが美しく、観る前からちょっとワクワクします。いかにもいい芝居が観られそうな匂い!




病的な懸賞マニアの固定資産調査員・青井あゆむ(小林高鹿)と妻の紫(水野美紀)。隣人の緑川黒雄(長谷川朝晴)は、青井にいきなり「おたくの庭の池が少しずつ広がってる」と告げにくる。その義姉で黒雄と不倫関係にある緑川緑(小島聖)は、紫の兄・白根赤太(玉置孝匡)に「自分を捜しにくる男に、自分のことなど知らない、と言え」と頼み、街の何でも屋・イェローさん(ぼくもとさきこ)は、青井に片思い中。青井はある日、固定資産調査で佐藤家を訪ねるが、肝心の家主が姿を見せない。その妻(内田慈)に「彼は懸賞マニアだ」と聞いた青井は佐藤に会いたいと執着しはじめ……。


……これだけ書いても(面倒くさそうな物語ですよね)、まったく物語の内容と意味はわかりません(笑)。難解という評判も聞いていたのだけど、ある一点(色分けされた登場人物は、すべて佐藤のつくりだした妄想世界)を押さえておけば、そうでもないです。タイトル秀逸(笑)。時系列が前後したり、さりげない伏線が忘れた頃に明かされたり、舞台ならではの構造に脳みそを刺激されっぱなし。おもしれぇ!謎のピースが完全にはまりきったわけではないので、私の解釈がすべて合っているとは思いませんが、終わった後「ほ〜〜〜〜」と気持ちいい疲労感が。いや〜集中したね。ラスト、佐藤にとっての守り神だったイェローさんの腕と足がもげた時にはゾクッとしました。


場面場面のエピソードやセリフもよかった。印象的だったのは「私を決めつけて」という緑と「私を決めつけないで」という紫の対比。黒雄の「子供時代に踏みつけたミニカーが足の中にある」エピソードと、それを馬鹿にされて緑に殺意を覚える流れ。理系の(幾何学的な)構成と、文系の割り切れないモヤモヤした部分と、両方のバランスがとれている作風、好き好き大好き。


高鹿さんが、お得意の「心ない軽薄でイヤミな二枚目」ではなく、じっくりと青井(佐藤)の怖さを表現。それにしてもサングラスかけるとカッコイイよな〜(笑)。同行人のオカンが「あの人なんていうの?かっこいい!声もいい!好みのタイプ!」と盛り上がってました(六十路だよ、分かってる?)。水野さんはセリフがべたつくのですが、変人ぞろいの中で割と普通の役を嫌みなく演じてました。小島さんは……エキセントリックさが一歩間違うと鼻につくギリギリのところですが、私は好きです。ぼくもとさんと玉置さんのPPPP組はさすがだ……。


長谷川さんは、義姉にリードされる頼りない次男坊にピッタリ(笑)。まだ高校生イケルんじゃない?というくらい変わらないね〜。相変わらず声がよくて、相変わらずセリフと身のこなしのリズムが気持ちよくて、相変わらず猫背でプリケツだな、と嬉しくなりました。緑を殺しにいく場面の表情が秀逸。オカンが「A太とかこの人とか、あんたの好きな人って屈折してて暗いカンジがするね」と言ってたのですが(すみませんえーたくん)、あの「好青年・爽やか・フツー」が売りだったハセにそんな感想が出てくるってのは、すごいことじゃん?好演だったってことじゃん?


ちなみに、音楽はさけろっく。そう思って聴くからかもしれないけど、いいッス。