「少女とガソリン」阿佐ヶ谷スパイダース@ザ・スズナリ

「日本の女」「はたらくおとこ」に続く「暴走する男たち」シリーズ第三弾。ある(部落?)差別を受ける地域で酒蔵を営んでいた玉島(中村まこと)たちが、そのたまり場の居酒屋に「労働者たちのアイドル・リポリン」(下宮里穂子)が訪れたことをきっかけに、暴走していくお話です(すごいざっくりです)。




このシリーズは一貫してまことさんのためにある、のではないでしょうか(笑)。ちょっと抑えめの序盤といい、ラストにむかっての見せ場づくりといい、役者冥利につきる役です、玉島!今回は、そんな「がんばるおじさんども(代表・まことさん)」を、可愛い高校生(下宮さん)がヨシヨシ、と誉めてあげる、そんなハナシだったよーな気がします←ちょっと意地悪だけど(笑)。ダメ〜なおじさんたちに「私はそんなあなたたちを悪くないと思う。好きだよ」と言ってあげるための2時間半、というような。


もちろん、物語の骨格は相変わらずすごくしっかりしていて、玉島とリポリンと、そのマネージャーの丸代(犬山イヌコ)の関係性が明らかになる重い終盤は、イヌコさんの好演(これ、重ったるい女優さんがやったら耐えられなかったと思います。イヌコさん素晴らしい)もあって流石だなと思います。ただ、ちょっとそれでも「湿って重すぎ」なんですよね。あと15分刈れたら、胃もたれしなかったのにな……。


あと、おじさんたちの暴走っぷりでいうと、これまででいちばん「理由」がなかった、ような。血で盛り上げたいために、あえてそんな場面を作っているんじゃないかなぁと思うような、力技の勝った場面が多かったように思います。多かれ少なかれ、長塚さんの脚本にはある部分なのですが、今回は特に気になった、かな。役柄そのものにはあまり説得力がなかったのですが、酒蔵の杜氏・山路(池田鉄洋)の演技が◎。全員が「美声を張り上げる」中で、抑制が効いてて流石だった。あと中山祐一郎さん大好き☆!なんだけど、今回は割としどころの薄い(というかいい人の)役で残念。彼の「無意識な悪意の芝居」の大ファンなので。


長塚さんが惚れ込んだというリポリンは……役に合っていた、と思います。シロートっぽくて素直なのがいいんだろうな。うん。


それにしても、これだけの役者さんをそろえてスズナリっていうのは贅沢でした。「日本の女」もココだったもんなー、こだわったんだろうなー。ありがとうございました!そして、スズナリ上演を楽しむかのような、階段まで赤く作りこんだ美術も楽しかったです。