ディストピア3連続

特に意識してなかったんだが、何故か1週間に3つ、すべてディストピアものを見て、どんどん憂鬱な気持ちに・・いや大好きなんですけどね><。パルコステージ「ツインズ」(作演出・長塚圭史)は、古田さんたべちゃん吉田こーたろーという豪華キャストと、最近は高尚な方向へ向かってる長塚さんを古田さんがエンタメ方向に引き戻したくて依頼した、と聞いて楽しみにしていたんですが。恐らく放射能に汚染された世界。海辺の実家に住む兄(吉田)に、日本を脱出する金を借りに戻ってきた弟(古田)とその娘(多部)。お気楽な兄や家の人々と衝突するが・・。家で兄弟の寝たきりの父の世話をする謎の女性・りょうがすごくよかったし、物語のキーマンでもあるんですね。海で採れる魚や貝がどんどん大きくなっていって、最後は海に流された双子の赤ちゃん(ツインズ)が巨大化して戻ってくる・・というエンディングに希望と怖さがあるわけだが、そのあとの2作品の濃密さに比べるとちょっと思わせぶりなだけというか・・。古田さん多部ちゃんはこんなもんじゃもったいないと思う。


本多劇場「消失」はナイロンの名作の11年ぶりの再演。なんと同じキャストが再集結ですよも〜なんて贅沢!プログラムで言ってた若手役者がいるけど「ブラジルのサッカー見てるみたい」だよねえこの5人のアンサンブルは。こちらも何らかで汚染された世界。ひっそり暮らすチャズ(大倉孝二)とスタン(みのすけ)の兄弟、弟のスタンに恋人(犬山イヌコ)ができるのを一見応援するチャズだが・・。こちらも兄弟モノなんですが、その関係の濃さとひねくれ方と狂いっぷりがドキドキするんですよ。ケラさんの笑いをはさむことで悲劇をより鋭くする手法の真骨頂です。そしてこれを見て改めてこの作品のルーツである「4.P.M」は傑作だったなあ・・と感慨深い。手元にはVHSしかないんだけどすごく見たくなった。客演のヤッシー八嶋氏が凄く良かったです。


最後は映画「さようなら」。平田オリザ氏とロボット研究者の石黒浩氏が手がけるアンドロイド演劇を深田晃司監督が映画化したもの。原子力発電所の事故で住めなくなった日本。国の管理のもと国外避難が進む中、優先順位の最下位な外国人のターニャとその世話をするアンドロイド・レオナの物語。ターニャのもとから少しずつ関わる人が消えて行き、彼女から生きる意志と命が消えて行く様子を、美しい風景をじっくり長回ししながら静かに描きます。有名な俳優は新井浩文くらいかなーとんでもない役だったけども(笑)。なんかすごくずしーんと来ました。ターニャが亡くなっても、アンドロイドのレオナは生きる(というのかな)んですよね、ただそこにいて。ラストシーンはあえて美しくなくて、ドラマチックじゃなくて、そこがまたなんともよかった。途中の夏祭りのシーンといい、思わせぶったツインズには描けない怖さがここにはありました。お勧め。