「ウーマンリブ先生」ウーマンリブ@サンシャイン劇場/「イヌの日」阿佐ヶ谷スパイダース@本多劇場

どちらも、絶対観てソンはしない、という舞台です。




ウーマンリブ先生」。エロ作家の夏祭(松尾スズキ)がカンヅメになる温泉宿。そこにやってくる彼のファン塩谷(古田新太)は、スランプ気味でやる気のない夏祭の代筆で小説を書き始めるが、それはとんでもない彼の半生の告白になり……という、ざっくりとしすぎたあらすじですが、そんな話です。ダークでサイコなテイストも強いので「くどかんに松尾ちゃんが降りた」とか言われているようなのですが、ちょっと違うような。塩谷の心の中に棲む「怪物くん」の登場に、「生きてるし死んでるし」の「ドラえもんお化け」を思い出しましたけどネ。松尾さんほどの社会性は感じず、とにかく「物語」としての完成度を堪能しました。クドカンの筆がノッてる時期なんだなぁというのがすごく分かります。12人の登場人物がいるのだけど、誰一人としておざなりになってない。それでいて本筋の夏祭と塩谷へのフォーカスの仕方もムダがないし。パソコンの画面を障子に映す演出もうまい。あとね、オープニングのお遊びコント、秀逸です!


役者さんでは古田&松尾コンビ(というほどコンビではないが)の上手さはもう……日本演劇界の天然記念物指定でひとつ。久しぶりの池津祥子さん&猫背椿さんの女優陣もすばらしす。平岩紙ちゃんもかなりの実力派だと思います。役者・クドカンも出番は少ないけどやっぱり大好き。あぁもう一度彼の「悪霊」を観たいなーーーーー。


「イヌの日」。小学生時代の同級生たちを、自宅の地下の防空壕に17年監禁している中津(伊達暁)。彼らの世話を一時的に頼まれる広瀬(内田滋)と、彼が連れて来た宮本(八嶋智人)は、外界から隔離されてるが故にピュアな監禁者たちに惹かれていく。


2000年の初演時には中津の行動に「理由のない不気味さ」が漂っていて、ブラックファンタジーとしてズーンと重く響く話だったのですが、今回は「中津にもそうする理由がある」というところまで加筆されました(プログラムによると、再演にあたっての長塚さんの重点的な狙いだったようです)。それが奔放な母親(美保純)へのコンプレックス。荒削りなよさは減ったぶん、お芝居としての完成度と厚みはあがったように思いました。ラスト「地下」に対して「地上」が現れた演出も印象的。


ヤッシー八嶋さんが、前回の「噂の男」に続きすごい存在感です*1。プログラムのインタビューを読むと、やはり最近自分でも一皮むけた実感があるみたいで、確かに前の小器用な感じから、深みが増してこられたなぁと(偉そうでごめんなさい)。でも「宮本」は前の小林健一さん(動物電気)もすっごいよかったんだよね。儲け役でもある。


中津の伊達ちんは、賛否両論あるようだけど、私は好きでした。広瀬の内田くんの方がもう一歩、かな。他には中山祐一朗さん、村岡希美さん、剱持たまきさん……特に剱持さんの、出過ぎないのに説得力のあるヒロインぶりはとてもよかった。


最後に。私は中山祐一朗さんだいっっっすきなんだけど、プログラム読んだら、彼も「分かんない」一辺倒の人なんだね(笑)。私の好きな役者さんって、だいたいそうなんですよ。「分からない」「知らない」「特には」みたいな素っ気なさ、もしくは言葉にできなさ、が身上。偶然ではないと思います。


ちらしで発見。ペンギンプルペイルパイルズの倉持裕さん×元ジョビ・ハセガワトモハル!嬉しい〜〜〜〜!でも来年6月って……(笑)。

*1:ウーマンリブ」は終わって「ロード(虎舞竜)」が頭回るけど、こっちはヤッシーの「ロマンティックが止まらない(C-C-B)」が回る(笑)。