「彼女がその名を知らない鳥たち」沼田まほかる

「いまは重いもの読めないし〜、さらっとサスペンスでも」と思って読み始めたら……




重い!なんだこのどんよりした湿感は。全編、雨が降り出しそうな曇天(むしろ、雨が降ってるよりタチが悪い)。桐野夏生さんの世界観に少し似てますね。作者は50歳を過ぎて賞をとってデビューした方で、これが二作目。「主婦、僧侶を経て会社経営」とゆうなんかすごい経歴の方です(笑)。文章自体は細密で粘着質なのだけど、語尾を過去形ではなく現在形でしめる文体なので、不思議な臨場感とスピード感がある。(以下ネタバレ気味)

彼女がその名を知らない鳥たち

彼女がその名を知らない鳥たち

テーマは「献身」。というと直木賞受賞作「容疑者Xの献身」が思い浮かびますが、あの「献身」が直木賞なら、これだって直木賞3つくらいとってもおかしくないんじゃないでしょうか。だってこっちの献身のほうがリアルで胸苦しいよ(ラストシーンのみ疑問が残りますが)。次にどんな作品を書かれるのか、ものすごおおく気になります。読後、速攻でデビュー作を買いました。


ちなみに、映像化するなら、主役(女)は鈴木京香寺島しのぶだと順目すぎる)、主役(男)は温水洋一(もしくは小日向さんか香川さんでも)、主役(女)が8年間忘れられない男にタニショー、主役(女)の新しい不倫相手に細川茂樹でお願いしたい。相当見たい。