「あんなに優しかったゴーレム」ヨーロッパ企画@あうるすぽっと

A太とうえのじゅりちゃん主演「サマータイムマシーンブルース」でおなじみの、京都の劇団。10周年記念ツアーの新作です。




プロ野球ホープ・神崎投手(酒井善史)のドキュメンタリーの撮影で、彼の生まれ育った町へ向かったTVクルー。とある空き地で、神崎はいきなり目の前のただの大きな土の塊を「ゴーレム」と呼び「小さい頃からこのゴーレムとよくキャッチボールをしたんですよ」と懐かしそうに語りだす。とまどうクルーたち。しかし、神崎は真剣。その上、町の人たちもみな「ゴーレムには世話になった」と語り、おまけに、地中には「ゴーレムに育てられた少女」が住んでいるとまで言う。あ然とするクルーたちの前に、地中から女子高生(西山直子)が出てきて……。


2作しか見ていないのですべてがこのパターンではないだろうけど、とある「超常現象」があり、周囲のひとびとが最初はバカにしながら、1人ふたりと信じていき、最後は全員で盛り上がってしまう。その過程が温かいドタバタとともに描かれる。というところが共通していました。ゴーレムとは「ユダヤ教に出てくる、主人の命令だけを聞く泥人形」のことですが、そのゴーレムを信じさせる筆運びが巧いなぁと。ゴーレム研究家(角田貴志)が語るゴーレム史なんか「へ〜」と思ったもんなぁ。「傘地蔵の恩返し」も実はゴーレムである、とか(笑)。で、そこにさらに「ペガサス」まで登場してバタバタと絡む終盤は盛り上がりました。オチは読めたけど、そのあっけなさも好み。


役者さんはみなさん達者ですよねー。男子がそろってくだらないことをわちゃわちゃわちゃ〜〜〜、が好きな人は好きな舞台だと思う(笑い)。ただ、全員が同じトーン&色味の芝居をするので、そのわちゃわちゃが続くと少し飽きるんだけど(サマータイム……のときも思った)。だからこそ、少し朴訥とした台詞回しがキュートな音声さん役の本多力さんとか、最後までゴーレムを信じない照明係の土佐和成さんのちょっとひんやりした感じ、とかが目立ちます。本多さんは最近けっこうCMも出てるし、妙な可愛さがあって注目ですよん。


関西の劇団なのに、スマートなウェルメイドで引き際がきれいなのは好みです。ウェルメイドって実はいちばん難しいジャンルだと思いますし。同行人が気に入って過去作品のDVDを大人買い。回し見せてもらう予定です(笑)。