「あれから」KERA MAP@世田谷パブリックシアター

一昨年末に上演された「我が闇」に予兆のあった変化(正攻法に「エンゲキ」を引き受けていく姿勢、というのか)が、今年の「シャープさんフラットさん」「あれから」ではますます強く感じられた気がします。個人的には、ナンセンスさとのバランスが少し崩れてきたのが気になるのだけど(だから「犯さん哉」みたいなのもまた観たい)ウェルメイドに進みつつ完成度の高さは群を抜いている作品には、いままで期待を裏切られたことはありません。打率100%。「あれから」も倦怠期の夫婦2組を描きながら、ケラさんらしいシニカルさと温かさに満ちています。最後、ちょっと泣いた。作ってる方に泣かすつもりはないんだろうけど、だからこそ。




高校時代に親友だったニチカ(余貴美子)とミラ(高橋ひとみ)が、偶然再会する。当時、2人はサキ先生(萩原聖人)に憧れていたが、その思いがいまもわだかまりにつながっている。そして、それぞれが家庭に問題を抱えつつ、お互いにそれを話せず、しかし実は人間関係は密につながっていて……という2幕3時間、も、あっというまです。あらすじを聞いていた時点では、親友だったはずの女性2人の腹の中は実は……なじっとり嫌らしい面が描かれるのかなと期待してたんですけど(←性格わる)、そこまでではなかったですね。それよりは、今現在の互いの家族が抱える問題のほうに重点があった。1幕目は不穏な空気が満載ですが、最後には危機にあった両方の夫婦が再度やり直す、という「ハッピーエンディング」になるところは、年末の気分にふさわしいかもしれません。ニチカの夫は「大人のおもちゃ」会社の社長ググ(渡辺いっけい)で、ミラの夫は元・パティシエで今は写真家のミクリ(高橋克実)。この夫たちのキャラがなんとも悲しおかしで、キャスティングも素晴らしかったです。


ミクリの不倫相手ギャル・モナミ(岩佐真悠子)がハマリ役で、小悪魔ちゃんな彼女相手にチューするは、服脱がせるは、もうカッツミー役得!とニヤニヤしちゃった。イワマユちゃん舞台でのお芝居が巧くなりましたね!あと、ミラの不倫相手であるユゲを演じてる役者さんが、髪の毛がパーマでもっさりしてて、すらっとしてて、声や芝居のヒヤッとくる感じも好み!!!と注目したら、柄本佑くんでした。うきゃ〜☆あんなに背が高くてスタイルいいとは知らなかった。お芝居もユゲの危ない空気をよく表現していて、それだけに2幕目にほとんど出番がなかったのが残念。もっとふくらむキャラだったのにー。カーテンコールの無愛想な顔も好み(笑)。あと、ググのプータローな弟のビビ(赤堀雅秋)。シャンプーハットの作・演出をされてる方です。小太りの松尾ちゃんみたいで、芝居の方向もおんなじです。びっくりした。松尾ちゃんとかマギーとか「作者兼役者」のひとって同じ空気をまとってるよね。クレバーで、芝居の中の立ち位置をきっちり守って巧い、という。前から気になってたんだけど、やっぱり一度シャンプーハット観にいこう。


最近の堂々とした円熟味も素敵ですが、やっぱりわけわかんないよーなのも観たいです。次回作「神様とその他の変種」はどんなふうになるんだろう。ナイロン精鋭キャスト(犬山さん、みのさん、リエさん、大倉くん)が好みなので、めちゃ楽しみにしています。