「サッちゃんの明日」大人計画@シアタートラム/「て」ハイバイ@東京芸術劇場/「世田谷カフカ」ナイロン100℃@本多劇場

お芝居の秋です。2ヶ月に1度?くらい、デスクに観劇部長のS氏が訪ねて来て「ながさん最近何見ました?見てない?じゃこれとこれおすすめ」とチラシを置いていってくれるおかげで、なんとか小屋通いできてますー。ありがとS氏。「て」なんて、あの小さなキャパでいきなし同僚4人に会うって……どんだけS氏の宣伝活動の成果なんですか(笑)。




「サッちゃん」。蕎麦屋の看板娘(30歳)サッちゃん(鈴木蘭々)をめぐるダークでおバカでどうしようもないお話。これをまつお節復活と思うか、昔のまつお物に似ているだけにそれよりパワーが落ちたなぁと思うか、は分かれるところではないでしょうか。とにかく役者・宮藤官九郎がすばらしい件。台本も小説も書かなくていいから(こら)役者もっとやってくれ!と本音があふれだしてしまったさ。あの、的確なのにのりしろの自由な感じとか、何ともいえない華とか(本人は何もアピールしてないのに)。正直、宮藤さんが出てくるまで地味だなあと思っちゃったのが、急に面白くなったもん。皆川猿時さんのおデ●ちゃんっぷりが活かされた役といい、大人計画とは「身体性」なのだねえというのは改めて感じたところ。その身体性×テクニックとして、小松和重さん、家納ジュンコさんの「サモアリ」組が素晴らしかった。蘭々さんは上手なのだけどどこか面白くなりきれない……冒頭の明るい「サッちゃんの歌」でつかめなかったのは痛いですね。


「て」:岩井秀人さん主催「ハイバイ」は最近注目の劇団です。野田秀樹さんもケラさんも絶賛。うちの観劇部の面々も絶賛。な、作品の再演。岩井さんの私的な体験をそのままつづったという舞台。とある家族が集まって起こるさまざまなぶつかりあい。母や子に暴力をふるう父への思い、寝たきりの祖母への思い……それぞれが抱える思いがちょっとしたきっかけで吹き出す。その一日の様子が、次男と母ふたつの視点で繰り返されるのがとても面白い。こういう日常会話をさりげなくやりとりするスタイル(青年団式)はヘタすると退屈するんだけど、一瞬も飽きないですね。母役の菅原永二さん(猫のホテル)のドライな感じがとてもよい。なお、アフタートークの岩井さん×本広克行監督もまったりしていて面白かった。本広さんってあれだけのメジャーな人なのに、とてもシャイで好感高し。


「世田谷カフカ」:ケラさんのカフカ愛がつまった一作。ナイロンのナンセンス系舞台にカフカをかけあわせた作品、かな。休憩込みで3時間以上、この不条理で特にカタルシスもない世界につきあうのは大変、と思う方も多いでしょう。私はそのモザイクみたいな構成や笑いのくすぐりや、すべてが超楽しかったし笑ったけども、それはナイロンの役者さんをよく知っていて「このひとがこんなことを!」みたいな部分まで楽しめたからかもしれません。ただ、これだけのものをこのペースでつくりつづけられる(まつおさんが息切れ気味なのと比べても)ケラさんの業の深さってすごいよなあと思う。カフカ役が中村靖日さんだったのはぴったりでした。素晴らしい口跡!!あまりに展開があっちこっちするので、それを役者さんスタッフさんが間違えずにこなすだけで凄い。衣装や装置をプロジェクターにする演出も、あらためて凄い。ナイロンオールスターズの登板が少なめで、そのおかげで久しぶりに藤田秀世さんや吉増裕士さん喜安浩平さんの中堅組が活躍するのが観られてよかった。若手もみんな上手だけど、ケラさんはほんとに水野顕子さんが好きだな。いかにもナイロン顔の女優さんですね。あの同性がイラッとくる感じは演技なのか素なのか、興味深い(笑)。出番は多くないがやはり新谷真弓さんや植木夏十さんは上手。皆戸麻衣さんがぐっと伸びてます。