フローズン・リバー

渋谷に映画を観に行く。といってもきょうはヒューマックスは通り過ぎてシネマライズへ(笑)。「フローズン・リバー」は同僚の映画王子が今年度NO.1と言いきった(ってまだ2月ww)1本で、小品ながらたくさんの受賞歴を持ってます。平日昼、いかにも映画通という雰囲気の男性や熟年夫婦など20〜30人は入ってて、なんか落ち着く空気。




ニューヨーク州とカナダの国境沿いに住むレイ(メリッサ・レオ)は、新しいトレイラーハウスを買う資金を夫に持ち逃げされ、食べるのにも困る状態。二人の息子のためにも何とかしてお金をつくりたいと考えている。彼女は夫が乗り捨てた車を拾って乗りまわすモホーク族保留区の女性ライラ(ミスティ・アップハム)と知り合い、凍った国境沿いの川を渡って、カナダからアメリカへと不法移民を密入国させる裏仕事に誘われる。ライラもまた、夫に死なれた後、夫の母に渡ったひとり息子を思い、お金を貯めて定職に就きとりかえしたいと考えていた。白人とモホーク族、最初は人種の壁もあって利害関係だけのつながりだった2人の母親が、とある事件をきっかけに……。


話はクライム物ならではの緊迫感もあるしドラマティックなのだけども、淡々とふたりのシングルマザーの姿を追っていく。監督が細部までこだわったというドキュメンタリーの質感は、まさに私好みです。悲惨な経済状況なのに入浴剤を買うことをやめられず、お金が手元に入ると即ショッピングに子どもを連れて行こうとするレイのルーズさ、それでもたくましく息子たちのために稼ごうとする強さ。15歳という微妙な年ごろの息子がそんな母親に時に反発しながらも深い愛情を持っているのが物語の救いにもなっている。彼の気持ちが伝わるラストシーンがとても素敵です。そしてはてしなく凍った川の白く圧倒される厳しい絵に、この世の異世界を知る。あの青みがかった白って、映画のスクリーンに映える色だなあ。話それるけど、バンデイジもあのパキっと白く曇った空が効果的だったなと思うし。


この物語の最後には少しだけ希望があるけれど、実際のアメリカの貧困層の暮らしはどうなんだろう。と思って、帰り道これを買った。

ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)

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