第9地区

南アフリカヨハネスブルクの上空で難破して停止した宇宙船。衰弱したエイリアン(蔑称・エビ)たちが「第9地区」と呼ばれる一角に収容され、そこでコミュニティをつくって20年。人間とのトラブルも増え、ついに移住計画が実行される。実行委員長に抜擢された超国家機関MNUの職員・ヴィカスは、立ち退き勧告のために第9地区に入って、謎の黒い液体を吸いこんでしまう。そこから彼に異変が……。傑作との評判ゆえか、公開2週目なのに超満員でおどろきー。



いやー汚いしグロいので(それは観客にとってこのエイリアンが差別意識の「踏み絵」になるよう、生理的嫌悪感のハードルを高く設定して描いているからなのだろうが)ダメな方はダメかと。おまけに、もっとSFホラ話としてチープ&ユーモアのある作品だと思っていましたら、アパルトヘイトへの風刺だけあって、ドキュメンタリーに近い肌触りでグロさも展開もリアルです(笑)。でもそこが面白さでもある。低予算だと聞くのに、なんだろうこの臨場感は!主人公と知り合うクレバーなエビちゃん親子がいるんですが、ハリウッド映画なら、その子供や主人公との絡みをもっと愛らしいエピソードをまぶして描くと思う。でも、これは驚くほどあっさりだし。そのパパエビちゃん(クリストファーという名前です)が赤いベスト?を着てて、可愛げがあった(笑)。この宇宙人たち、姿かたちも行動もグログロで、でも好物がキャットフードっていうのがちょっとだけキュートです(笑)。


ヴィカスという主人公も、最後までズルくて自分勝手で感情移入も応援もしづらいが(その意味でもアクション大作のヒーロー像とは真逆)それだけにほんの10秒ほどのラストシーンが沁みるのだと思う。MNUの描かれ方は、今だと、共和党のもとに巨悪をむさぼっていた保険会社をほうふつとさせますね。


ユーモアのセンスで「抜く」箇所が思ったよりも少ないし、終盤のアクションの連続は正直、少しお腹いっぱい気味ではありますが、まさに「世界観がすごい」(笑)。このドキュメントタッチのユニークさをお薦めします。