「芝浦ブラウザー」@東京グローブ座/「その族の名は家族」@青山円形劇場

最近この手の感想を書いていなかったが、誰も読んでなくてもwやっぱりさくっと残しておこうかと。少し前のものです。「テレビの人気者」が小劇場の俳優さんと混ざったときにどんな舞台になるか、の対照的な2本だったかなと思いました。




「芝浦」は映画「サマータイムマシンブルース」や「曲がれ!スプーン」の原作(どちらも踊る〜の本広カントク作品)でも有名な、人気劇団ヨーロッパ企画上田誠作・演出)の新作。まったく予備知識がなくて、グローブ座という時点でピンと来ればよかったのに、誘ってくれた仕事仲間のW氏に「(ヨーロッパだから客席に)女性が多いですね〜」とか呑気に言って「さすがですよね」と返されて「(あぁヨーロッパだから)ね〜♪」とうなずいててww。舞台が始まってもしばらく「……あの俳優イノッチに似てるけどヨーロッパの新人かなー」とか考えており、彼が前に出て来たときに「へ?マジでイノッチすか??!」と気づいたというwww。そういえばイノッチは上田さん作の「昭和島ウォーカー」にも主演してましたもんね。マーチングJイベントも舞台で出られないかも、とか言ってましたもんね。それがこれだったか。


架空の近未来?。高層ビルが立ち並ぶシバウラ。不動産屋の社員フジタとオノ(井ノ原快彦・音尾琢真)が、パソコンから川沿いのスラムの段ボールハウスを覗き見している。その個性豊かな住人たちは美人で男前な「管理人さん」(芦名星)の食事の腕に惹かれて集まってきた面々。その「ハウス」のあまりの秘密基地めいた様子や食事風景の楽しそうな様子に、フジタはスラムへ引っ越すことを決心。結局、再開発の波に飲まれてスラムは解体するが、それぞれは今を引きずることなく、自分たちの次の「家」を求めて消えていく。


これ、すごく良かったです。ヨーロッパの芝居の中でも一番好き。劇団員だけだとちょっと内輪ノリっぽくなってクドくなるところを、イノッチや客演の市川しんぺーさん(猫のホテル)や伊達暁さん(阿佐ヶ谷スパイダース)がうまく中和してて。特にしんぺーさんのまったりしてるのに濃すぎない温度感、大好きなんだよねえ!イノッチは毎朝レギュラーやりながら、これだけあ・うんの呼吸が必要な会話劇を練り上げて引っ張る実力に、正直すごおく感服いたしました。芦名さんは上手くはないんだけど、サッパリした芝居をするひとなのでイノッチともよく合ってましたね。ヨーロッパ組では、大好きな本多力くんのスパイス的な役柄ににんまり。なお、ヨーロッパってよく料理シーンがあって、舞台上で本当に料理するんだけど、今回もお腹空いた時間帯に生姜焼きのいいにおいが漂ってきて、たいへんきゅるきゅるいたしました(笑)。


「その族の名は」は、作者・岩井秀人さんの家族をモデルに描きあげたハイバイの名作(ほんとに!!!)「て」のリメイク。認知症の義母(研ナオコ)を看護する妻(ユースケ・サンタマリア)のもとに、娘(内田慈・浅野千鶴)や息子たち(滝藤賢一荒川良々)が集う。その酒盛りの最中に起こる兄弟や夫婦の悲喜こもごもを、まったく同じシチュエーションを別の人物の視点から2度繰り返す、という手法で立体的にあぶりだす舞台です。


この芝居のいちばんの特徴は主人公である「母」を男優さんが演じること(で、不要な生々しさを回避している)。そして、家族各々が抱える気持ちはストレスや不満やすれ違いとそれによって引き起こされる確執であるにもかかわらず、それがかなり「喜」の要素の強い「悲喜劇」に仕上がっていること。その「悲喜劇」の肌触りが、今回は少し変化していた。地味な役者が演じることで身につまされるリアリティがあったものが、スター俳優たちが何人も参加したことで洗練され、かつ「芝居(つくりごと)」としてパッケージされてしまったんだなあという印象。良くも悪くもドラマティックになっていた。それは悪いことではないし、食べやすく万人受けするものになっていたように思うので、ま〜好みかなぁ。ユースケ氏もよしよし様も好演されてましたし。それにしても、おばあちゃんが亡くなった後に現れる葬儀屋さんや神父さんにいたるまで、描写がイジワルで可笑しい。構成の素晴らしさといい、演出技術の上手さといい、ほんと名作だわー(しみじみ)。家族から疎まれてるお父さん(大鷹明良)の歌うリバーサイドホテル♪は何度聴いてもせつねーぜ。役者さんの中では神経質な長男を演じた滝藤さん、初見でしたが素晴らしくよかったです。